7月7日から始まったトレーニングも折り返し、後半の第3回になりました。今日も定時後に集まり、まずはチェックインとしてお互いの近況報告から。
今回2名の方が新たに参加。基本的に第3回目以降は実践編となるため、1回目・2回目のいずれかに参加した人を対象としているのですが、興味あれば大歓迎ですよ。
[目次]
インタビューの実践フィードバック
インタビュー、どうでしたか?
今回は、1回目のときに出した宿題のフィードバックを行います。前半のコーチを務めた中山郁英さんに続き、後半のコーチは牧貴士さんにお願いしました。
で、もう一度宿題の内容を確認しましょう。
県外の人に向けたUターン就職のための情報発信を行うために何をすべきか検討するため、「滋賀出身で県内就職をしなかった人」のペルソナをつくります。
そのペルソナ作成のため、まずは「滋賀出身で県内就職をしなかった人」をみつけ、インタビューを行なってください。
もともと3件を要件にしていたのですが、量よりも質重視ということで、1件集中してやってきた方もいれば3件こなしてきたよという方も。
で、インタビューしてみてどうでしたか?何がわかりましたか?ということで、各々の気づきや疑問を書き出してみましょう。
みんな書けましたか?書けたら今度はテーブルごとにその付箋を共有して、お互い振り返りをしてみましょう。
ん、何を共有しようとしてるの?w
ここからはグループごとに共有を通じた感想を発表してもらいます。ここからは牧さんもディスカッションに加わり、フィードバックを行なっていきます。
フィードバック
「お昼休みの時間を使った人は時間制限が生じてしまい、なかなか話が深まらなかったそうです。一方で仕事終わりにインタビューした人は時間の制約が比較的なく、雑談も交えた自然な会話のなかで色々なことを聞けたという違いがありました」。
「手法的なことですが、質問に答えていただいた際『これはこういうことですね』という確認をしてしまうと、相手は違うことを思っていても否定しづらいものだなというところが反省としてあがっていました。あと、質問する側は自分の軸で考えてしまうため、相手のことを自分の身近な人たちと比較してしまいがちだったりとか、そういうところで難しさを感じました」。
「一度軌道に乗ると割と深いところまで掘り下げていけるという話が出たんですが、逆にいうと、話し出すところで躓いてしまったら結構難しいなと思いました。冒頭で趣旨を伝えるというのはもちろん大事だと思うんですが、そこからどういう切り出しでインタビューに入ればよいかというのは難しいと感じました」。
初期視点とインタビューガイドで8割決まる
「インタビューガイドで一番大事なことは、仮説・初期視点をもつことでして」。
参加者の感想を聞いていると各自それなりの仮説を用意してきたようですが、ここで牧さんは「県外になぜ出たのかという問いだけでインタビューに臨んでいては、まだ割と闇雲です」と指摘。
「基本的に世の中の人間は、ほぼ100%、上辺のことしか言わないと思ったほうがいいです。だから普通に質問するだけじゃ全然聞きたいこと聞けないんです」。
感想の共有のなかで、「インタビューするなかで、例えば転職の理由や仕事で大変だったことなど本人にとって嫌な話がなかなか言葉にしづらい」という話がありました。でももしそのエピソードが自分の立てた仮説に対して聞くべきことなら、たとえ聞きづらいことでも「大事なことだからよかったら答えてね、どうしても無理だったらいいけど」と最初に伝えておく必要があるんですね。
「インタビュー前の準備がすごく大事で、これで8割決まるぐらいです。あとはインタビュー慣れをするというのもすごく大事。皆さんは今回初めてされたと思うので、そこは仕方ないと思います」。
インタビューは一人でやらない
感想の発表のなかで、「メモを取る人と聞く人をわけて作っておくべきだった」という声もありました。メモは後から記憶で辿ったそうですが、「でもやっぱり漏れてるような気もしたので、メモは取っておいた方がいいなと思った」と反省したそうです。
「それ一番やっちゃいけないやつです(笑)」と牧さん。一人で事実と解釈を分けているとどうしても主観が入ってしまいますし、その場で整理も追いつきません。その辺りは第2回のときにも中山さんが言ってましたよね。
「インタビューが終わったらすぐにラップアップ、振り返りの時間を作らないと忘れちゃいます。その時の空気感は、仮に録音してたとしても、聞き手によって全然違う風に感じているものです。対象者が喋る言葉を複数の視点で聞いてメモして、それについて話し合うことで客観的な事実が見出されます。それがペルソナをつくるにはすごく重要なところになります」。
一人だけでインタビューして一人だけで記録していても、結局そこには自分だけの主観が反映されてしまうから、客観的なペルソナを作ることなんてできないんですね。実は宿題を出した際は敢えて必ずグループで作業するよう指示しなかったのですが、その必要性は今回のワークを通じて感じ取れたのではと思います。
なぜ?と尋ねるよりも、具体的なエピソードに迫る
参加者の書いた付箋のなかに「『なぜ』が浅かった」というメモがありました。その参加者いわく、実際にUターン就職した人に「なぜ滋賀に帰ってきたのか」という質問をしたそうですが、「家族と住みたかったから」「なぜ?」「うーん、家族が好きだから」と、同じ階層の問答しかできず、その人の深い気持ちまで入り込むことができなかったそうです。
「それよくあるやつですね。。。どんなテーマでも同じことですが、『家族が好き』ということに関するエピソードを聞くといいと思います。好きにつながるエピソードをあれこれ聞くと、その人が本質的に何が好きと感じるのか、どんなことに対して嬉しいと思うのかというところがわかってくる。それによってその人の本質的なパーソナリティが見えてきます」。
その人は「家族が好き」だと思うようなエピソードがあったからこそ「家族が好き」と言っているわけですからね。人は自分のことを正しく説明できないものです。だからこそその人自身の解釈だけに頼るのでなく、明らかな事実からその深層に迫っていく必要があります。
フレームワークには拘らない
第2回で中山さんが「相手が話しやすい環境をつくる」という話をしていましたが、そのためには脱線だってOKですよね。
「その人がいかに喋りやすい環境をつくるかというのは一番大事ですから。脱線があることも加味して、そもそものインタビュー時間をちょっと多めに、30分とか1時間ぐらい多めにとってもらうというのは重要かなと思います」。
インタビューに慣れてくると自分のリズムが掴めてくるはずなので、そのリズムを予め見積もってインタビューの時間を想定しておくとよいのでしょう。相手が話しやすい環境づくりも大事ですが、そのためには自分自身が話しやすい環境をつくることも大切なはずです。
「前半ではフレームワークとして色々学んできたと思うんですけど、フレームワークだけに拘ってしまうと逆にお互いが固くなったりして、余計相手に喋りにくい空気を作ってしまいがちになります。せっかく今回このようなトレーニングを行なっているわけですから、自分らしいインタビューの仕方を掴んでいただけたら」。
行動のためのインタビューであること
と、フィードバックの中盤で、「本当はどのタイミングで言おうかすごく迷ってたんですけど、、、インタビューなんて全然意味ないんですよ」と牧さん。
「そんなことを聞いてる暇があったら、自分の仮説を実際に実行してみて、それを市場に投げて、反応を得てみましょうと自分なら言う。ニーズなんか一切調べないスタートアップやベンチャー企業の人たちだっています」。
さしあたっては、こういうときに使われる「ニーズ」の語は、思考放棄の現れなのだと思った方がいい。「自分じゃ答え出せないから市場に聞いてみろ」「その市場が正当化してくれるなら、それは『いいもの』であるはずだ」と、要は価値判断を人任せにしているだけなのだ。そして、こうした思考形式というか、非思考の形式が常態化すると、結果として「ウィンウィンならなんでもいい」という判断がまかり通ることになる。
(中略)そもそも数値化できるものだけで社会は構成されてはいない。「ニーズ」「ニーズ」と言う輩に限って、実際は金にならない「ニーズ」は無視し続けるものだが、理由は簡単で、現状の数字の原理ではその価値を測定できないからだ。
ここで重要なのは、我々はいわゆるニーズ調査のためにインタビューをしていないということです。我々がいまやっていることはニーズなんてものを見つける作業ではなく、第1回や第2回でも触れたとおり「抑圧されているがゆえに語りえない本音」に迫るためのトレーニングでしたよね?で、どうしてその本音に迫る必要があるんでしたっけ?
「今回ペルソナ開発について皆さん学んでますけど、この4回のトレーニングが終わった後に、自分たちの思いをちゃんと自分たちなりに考えた基本構想みたいな形で出して、それが県の次期基本構想に反映されるぐらいのことをやってもらわないと、僕面白くないんですよね。滋賀県にとっても面白くない。
経産省の次官・若手プロジェクトと同じようなことがこのトレーニングから生まれるのがゴールなわけなんです。。。それが通るかわからないですよ、でも皆さん個々の思いをちゃんと形にしてそれを上に通すっていう一連の流れをしないといけない、そのためにインタビューのトレーニングをするんですよね」。
冒頭で「インタビューガイドで一番大事なことは、仮説・初期視点をもつこと」という話がありましたが、その仮説や初期視点の根本は、誰のために何をするのかという意思と結びついてくるものなのだと思います。
インタビューは手段の一つに過ぎない
さぁ、みんなが混乱してきましたw 「なぜインタビューする必要があるのか。インタビューして本心が聞き出せないなら、直接インタビューする以外の方法で聞き出す方法があるんじゃないか?」
「例えば観光客が減ってる理由を探る際には、人に聞くよりも観光客が減っている現場を観察するのが一番分かりやすいですよね。その現場に行ってなぜお客さんが減っているのか、お客さんはどういう動きをしているのか。それを1ヶ月ぐらい、こっそり後ろを付いていって会話を聞くとか、割とそこまでしたりすることもあるんですよ。その人たちの自然な振る舞いを観察して、そこから情報を引き出す」。
第1回で「行動観察」について少し触れましたけど、あれです。第2回のときに下記の記事をシェアしましたが、別にインタビューだけが全てではないのですよね。目的に応じていろんな手段があり、あくまで今回はそのうちの(デプス)インタビューを学んでいるに過ぎないのです。
参加者のひとりが、「今回のお題でいうなら、別にインタビューしたりペルソナを作るほどのことでもないのかなと感じました」とコメントしましたが、目的によってはそういう手段もアリなわけです。アプローチごとの違いを正しく理解するというのは本当に大事なことだと思います。
「とにかく行動することが大事というのをお伝えしたいです。そのためのインタビューだし。どういう戦略をもってどういう行動を仕掛けることで、ちょっとでもいい方に変えていくのかを考えることこそが、仕事の楽しさではないかなと思います」。
相手の知られざる一面を聞き出してみよう
さて、残りの時間を使って少しインタビューのトレーニングです。これまで誰も知らなかったような相手の一面を聞き出してください。2分で何をどう聞けばよいか、その質問を検討して、その後5分トライしてみます。
作戦、立てられましたか?ではやってみましょう。
どんな話が聞けましたか?皆さんに発表してみましょう。
と、一応書き起こしはしたものの、さすがにここでは紹介できませんw
聞く側と答える側を替えて、もう一度トライです。なんとなくですけど、確実に第2回のときに行ったインタビューよりも堅苦しさがなくなったなという感じがします。
「このワークにそこまでの意味はないのですが、こういった抽象的な質問が自分にとって向いてるなと思ったら実践してみてください。或いはこのような意外な質問をして相手に和んでもらって、そこから聞きたいことを聞くというのもアリです」と牧さん。
最終回に向けて
というわけで行動していきましょう。これが牧さんが今回一番言いたかったこと。
「今日の回が一体なんだったのか疑問に思うかもしれませんが、僕は何の解決策も提示する気もなく、皆さんを混乱させることが目的で今日やってきました(笑)。もやもやしながらまた来週に向けて」。
というわけで、今回も振り返りのビアバッシュです。今回の話だけで振り返ると多分混乱すると思うので、しっかり1回目と2回目の話とセットで振り返ってくださいね。
いよいよ次回は最終回。インタビューで得られた情報からペルソナをつくり、洞察を試みます(たぶん)。その上で、このようなアプローチによる新たな政策立案の有効性を確認しあうとともに、今後の展開について話し合います。お楽しみに!