写真提供:滋賀県秘書課

Policy Lab. Shiga のこれまでの活動と8月末に発表した知事への提言について、11月5日(月)滋賀県公館で、三日月知事とPolicy Lab. Shiga メンバーとの意見交換が行われました。この意見交換は、庁内事業として11月からスタートした「知事と話そう!職員座談会」の一環で行われたもので、Policy Lab. Shiga を始めたきっかけや1年間の活動・提言に書かれた思い等について、知事とメンバー間で、ざっくばらんな意見交換を行いました。

  • 日時:2018年11月5日(月)16:00〜17:15
  • 場所:滋賀県公館 第二応接室
  • 出席者:三日月大造滋賀県知事、Policy Lab. Shiga メンバーのうち7名(今岡優里、桐畑孝佑、佐野崇、澤田有希子、坪田浩平、筈井淳平、福井麻里耶)

[目次]

三日月大造滋賀県知事(以下「知事」):ようこそおいでくださいました。ありがとうございます。楽しみにしてました。5月頃に皆さんの取り組みが新聞に載ったのを読んで、話をしたいなと思っていたし、発表された提言に書かれていたことについても話をしたいなと。

Policy Lab. Shiga メンバー(以下「PLS」):ありがとうございます。その提言について、冊子にしたものを今日持ってきました。

EPUBで読む(5.4MB)
PDFで読む(2.7MB)

知事:
おお、そうなの。ありがとうございます。

PLS:
2017年7月にこの活動を始めて、1年かけて、完全に業務外でやろうと。

知事:
へぇ。1年間かかったのか。

PLS:
といっても、いきなり「デザイン思考」と言われても取り組めませんから、まずは1ヶ月かけてみんなでトレーニングし、その上で1年かけてロールプレイという形で実践しようと。自分たちが見つめたい問題を、実際にリサーチしながら見つけ、その解決のためのアイデアを、僕らだけでなく色んな人たちと一緒に話し合いました。

で、1年間やってみたら、デザイン思考と私たちの普段の仕事と異なることが何かがわかった。きちんと実際の仕事にデザイン思考の考え方を反映させていきたい、その思いでこの提言書をつくりました。この本には、このプロジェクトに関わった県職員の思いが詰まっています。

知事:
すごくいい冊子ですよね。読みやすいし。絵もいいよね。絵は誰が描いたの?

PLS:
イラストレーターさんにお願いしたんですが、どうすればデザイン思考がわかりやすく皆さんに伝わるのかなというのを、我々と一緒に思考錯誤しあいながら作りました。毎晩夜中の1~2時までかけて。

いつの間にか政策が作られている、事務分掌に引っ張られている

知事:
このページが一番気になった。「若手をはじめ現場に出向く職員の多くは、政策協議に直接触れる機会・環境がほぼありません」…ないんだ?

PLS:
今行われている政策課題協議では、最初のポンチ絵を若手が書くことはあったとしても、協議に関わり続けるということはないですね。

また、周りの動きがなかなか分からない。この間も知事が「やまの健康」推進プロジェクトチームの会合をされていましたが、私たちはあれをニュースで知るというところがあって。政策と自分たちの仕事の接点がなかなか分からないまま仕事が進んでしまって。

知事:
ああ…、そりゃそうだよな。僕も鉄道員の仕事をしてたとき、そう感じたことはあるんですよ。「どこでこの経営方針が決まってるんだろう」と。言ってやろう、聞いてやろう、出かけてやろう、と思ってやっていました。一人じゃできないので、徒党を組んで。

PLS:
一人じゃできないんですよね。Policy Lab. Shiga のメンバーも全然違う部署の人たちで集まってますが、いざ各々の職場に帰ると、そこで独りになってしまうところがあります。どうやってみんなの理解を得ながら、部局をまたがって、チームを組んでやってみようという動きが作れていくかというところが、僕らの挑戦なんだろうなと

知事:
職場に戻ると独りになっちゃうんだ。知事協議まではいかないまでも、「どうやったらより良くなる?」という話は、課のなかである?

PLS:
「自分の担当の仕事は自分で完結する」雰囲気があって、事務分掌に引っ張られちゃってるところは感じます。「それはあなたの仕事でしょ」という暗黙のルールのようなものが作られている。でも本来はそうじゃないはずですよね。

知事:
この人はこの仕事、あの人はあの仕事、になっている。なるほどね。

PLS:
「何かゼロ予算でもいいから、とにかく何か部局を越えて有志でリサーチしてみよう」といった動き方ができるかというと、思いはあっても業務内では難しいのだろうなと感じます。

でも今回のプロジェクトでは「人物中心」で問題発見を進めることによって、全然違う分野の人たちと会話ができました。そこで何が必要なのか、何が問題なのかということを、自分のエリアを越える形で共有できたことがものすごく大きかったなと感じていて。そういう仕事の仕方を業務のなかでしていきたいんです。

Policy Lab. Shiga が始まったきっかけ

知事:
Policy Lab. Shiga はどうして集まったんだっけ?もともとのきっかけは?僕が d.school に行って聞いてきて、知事談話では話したけど、でも僕が皆さんに指示したわけでもないし。…呼びかけがあったの?

PLS:
中途採用で入庁したとある職員が、「私はこんな仕事がしたいつもりじゃなかった」ということを帰り際に言ってきたんです。

「私はもともと福祉の仕事がしたかった。将来生まれてくる自分の子どもがもしかすると何かしんどい思いをしなきゃいけなくなるかもしれない。そのとき仕事として自分の子どものために役に立てる仕事をやりたくて入庁した。でも今県庁でやっていること、組織で期待されていることが全然違う」と。そんな悩みを抱えているという話を聞いたんです。

そのあと Facebook で、どこかでそういう思いを政策などの形にしていく機会は必要だよな、ということを呟いてみたら、みんなで集まろうという動きに広がり。最初に集まった21名のメンバーは全員ほぼ初めてみたいな人たちで。当時入庁1年目が多かったです。

知事:
研修が終わって最初の職場に配属になって、「なんだかなぁ…。周りの人たちは何やってるかわからないし、この仕事するために県庁に入ったわけじゃない」という気持ちもあったの?

PLS:
そういうモチベーションもありました。

知事:
その時の感覚って大事だよね。

PLS:
でも集まったところで何をするか。そういえば以前知事も談話でデザイン思考を行政で活用することの有益性を話していた。自分も前職の関係でデザイン思考や顧客開発のようなことはちょっとかじっていたんですが、あのアプローチが若手特有のセンスで形になれば、フラットな関係づくりなど、今の組織とは違うやり方で何か結果を出せるかもしれない。そう思って具体的にプロジェクトの方向性を固めていきました。

PLS:
「対話・共感・協働」という姿勢は入庁する前からも聞いていて、すごくいいなと思っていたんですが、でも実際にやろうと思うとすごく難しく、それをスキルとして学ぶ機会がなかなかない。一方でトヨタのような企業やデザインファームなどでは、それぞれ問題解決の手法みたいなものを持たれている。だから今回このプロジェクトの話を聞いたとき、デザイン思考を切り口に勉強できる、トライしながら実践していけると思いました。

「対話・共感・協働」

知事:
それでいうと、僕がなぜ「対話・共感・協働」という言葉を使い出したのか、あまり言ったことないよね。

…滋賀県知事になったとき、「政党の枠を越えてみんなの知恵が一つに集まる滋賀県を作れれば」という思いで選挙で信任を得たんだけど、その過程で「知事さん頑張ってね、滋賀県をお願いね」と言われることが多かった。でも僕らだけではできないしマンパワーも足りない。災害も公助だけでは対応できない。だから「一緒にやりましょう」ということをしきりに言った。それが協働。

でも「そやな、そやったら一緒にやるわ」と思ってもらわないと一緒にできないから、「ほなワシこれやるし、あんたこれやって」という共感が、そして共感のためには「そもそも何がしたいのか」「こうしようと思てるねん」という対話が要るなと。

「一緒にやろう」から始まって、協働、共感、対話の順番で、この言葉を起こしてきたんですね。でも、恐らくそんなことすら、県庁内でコミュニケーションができてなかったかもしれない。皆さんの提言書をみながら思った。

PLS:
僕らのここで書かれているアプローチも、流れは同じですよね。

行政の施策ありきで「このことについて協働しよう」と呼びかけても、相手に「それは行政がしたいことでしょ」と思われてしまう限り、協働には繋がらない。問題をゼロベースで議論しあうということで、「別に行政じゃない仕事で解決できそうだよね」という対話が生まれる。実際にロールプレイのなかでアイデアソンを開いたんですが、そのとき出てきたものは「行政で別にやらなくていいんじゃないか」というアイデアが多かったです。

知事:
うん、そういうことって、今の僕らの県庁内でもたくさんあると思う。

PLS
本当の対話・共感・協働によって、行政の役割というものが初めて見えてくる。「だから行政って必要なんだ」「だから民間の力って必要なんだ」というような話ができるようになってくる。だからこそ、政策って行政だけで考えない方がいいのかもしれないと。

人物像にスポットライトを当てることで、
想定していなかった領域の問題が見えてくる

PLS:
これがロールプレイの時に描いた、滋賀に暮らす4つの人物像、「ペルソナ」です。

知事:
これ皆さんがインタビューされたの?なかなかリアルだなと思った。

PLS:
インタビューなり自治会みたいなところに行ったりして、客観的にリサーチを行い、一人の「あ、いそういそう」という人物像をつくりました。

知事:
「いそういそう」なんだよね。でもこれだけだと「で?」になる。

PLS:
なのでアイデアソンを開きました。「この人物像が2030年も滋賀で暮らすときに何が問題になるのか、どうしたらもっと幸せに暮らせるんだろうか」ということをみんなで考えたんです。

するとこの人の価値観を中心にして、問題点の抽出や解決のアイデアが出てくるんですね。別に特定のテーマに限らないわけです。交通の話だけではなくて、福祉の問題、教育の話も出てくる。それを全然違う分野の人たちどうしが会話しあうことで、全然違う領域のものが見えてくる。

PLS:
私たちのチームは「地域コミュニティと若者の接点」というテーマでやってたんです。地域コミュニティというテーマでは何かと「地域の絆とか大事だよね」と言われますが、「とにかく大事だから絆を深めるために啓発しましょう」ではなくて、まず「あまりそういうことが好きではないんです」という人の気持ちを理解して見つめていくなかで、行政の政策を考えてみるという。

知事:
重要な問題提起だと思う。いい着眼点だったと思う。でも一方で、消防団とかお祭りとか、「よし、俺らの町を俺らで盛り上げるぞ」という気持ちで一生懸命やっている若者がいたり、それで成果を挙げている地域があるから、一概にこのやり方が悪いというわけでもない。よい接点があるんじゃないの?

PLS:
いろんな人物像が形になってくればくるほど、その人たちどうしのぶつかり合いであったり、拮抗点みたいなものが見えてくるんでしょうね。でもペルソナは本来140万人分作るというものでもない。その最大公約数をどうやって作るかというのがペルソナの大事なところなんですけど。

知事:
最大公約数が大きすぎたらみんなが元々持ってる起点がなくなるからね。僕ら行政はついつい大きすぎる県民像を作りに行っちゃうんだよな。

PLS:
私の担当したペルソナは「私、滋賀に移住しました」というタイトルなんですが、もし行政で「あなたはなぜ滋賀に移住しましたか」というアンケートをとったら、たぶん「琵琶湖が綺麗だから」「交通網が便利だから」「大阪・京都に勤めている旦那さんがいる」とか、そういう答えが出ると思うんです。でもその答えは別に些細な条件の一つかもしれない。実際に私がインタビューをした人は「なんとなく」っていう答えだったんです。そういう移住者って、行政が全く想定していない移住者なんじゃないか。

PLS:
僕は最初「私、滋賀に移住しました」というタイトルを聞いたときに「ん?」と思ったんですよね。僕らが行政のなかで口にしている「移住」って、「田舎に泊まろう」のような山間部に引っ越してくる人たちのイメージがすごく強いと思うんですが、このチームが描いた人物像は、そうではなく都市近郊に住んでいる人たちでした。そういう人たちの転居もまた「移住」だと捉えると、滋賀県が捉えるべき「移住」について違う側面が見えてくるのかなと。

リフレーミングというか、発想の持ち方を変えるというのは、このように「人」にスポットライトを当てるからこそ見えてくるんでしょうね。

知事:
「○○さんにスポットライトを当てる」というのはいいなぁと思うよ。政策課題協議のなかでも従来の価値観だけで語られるものがあって、「ホンマか?」と思うことがある。例えばそういうものに対して、Policy Lab. Shiga が取り組んだアプローチでどうコミットメントするか。

政策形成に「ミクロ」のアプローチを取り入れる

PLS:
定量的な統計やデータだけじゃなくて、潜在的な問題を見つけるための定性調査を、政策をつくる過程に盛り込むというのはどうなんでしょうか。定性的な情報をきっちり記録して、それをエビデンスにして政策をつくるということができると、政策課題の齟齬が減っていくのかなと思ったんですけれども。

PLS:
僕ら行政のこれまでの仕事はマクロな仕事が多かった。一方でミクロなアプローチをあまりやったことがないんじゃないか。でもそこの部分の掛け合わせこそ大事になってくるんじゃないか。

知事:
うん、共感します。僕らはどちらかといったらマクロだよね。僕はマクロだけの調査には懐疑的です。アンケートの結果も「選択肢がこれしかなかったからこの答えを選んだ」というのもあるからね。

PLS:
回答する人自身が自分の行動や気持ちを理解していなかったり。そこを探っていくことは難しいなと思ったところではあるんですけど。

知事:
職場によってはミクロな話も出てくるんじゃない?

PLS:
そうですね。現場にもよく行くので、県民の方と出会う機会はそれなりにはあるんですが、知事が先ほど仰ったように、「行政が頑張ってね」というスタンスでお話される方が結構いらっしゃるんです。そこで県民と行政との乖離があるのかなというのはひしひしと感じていて。

事務分掌を取っ払ったタスクフォースをつくる

知事:
知事に2つ提言をもらってるんだよな。

提言1

「県民の本音」を反映した政策協議を行う時間があるか、
事務分掌をこえてフラットに課題共有しあえているか、
行政の都合で協働を進めようとしていないか、
県民の声を再確認しないまま事業を完結していないか。

現在の政策形成プロセスにおいて、
いま一度、デザイン思考の姿勢に沿った検証を行い、
見直しを進めていくことを提言します。

PLS:
とにかく「成功しました」と言わなきゃいけない、みたいな空気を変えたい。出来てなかったら出来てなかったでいいじゃんっていう。「出来てない」ということをしっかり言って検証してみるということも大事なのかなと。

知事:
僕なんかは敢えて「やってみよう。あかんかったらあかんでいいよ」ということを言うようにしてるんです。ただ、じゃあどれくらいあかんかったのか、どれくらい出来たのかということは掴もうねと。「何が失敗やったか分かりません」じゃなくて。その説明責任はね。

PLS:
そうですね。

提言2

多様化する社会において、
「県民の本音」を起点にした政策形成を行うためには、
県庁が、職員全員にその意識を浸透させた組織に
生まれ変わる必要があります。

また、意欲ある職員が、 積極的に「県民の本音」を捉え、
政策に反映していくために、
チャレンジを後押しする環境を整備することも求められます。

そこで、次のような取組みによって、
デザイン思考を活用できる組織および環境の整備を
行うことを提言します。

知事:
組織・環境の整備か。こうしたらもっとミクロなことを聞きにいけるんですけど、こうしたらもっと事前に○○さんに着目した政策づくりができるんですけど、というのはある?

PLS:
僕らも具体的にアイデアを一つ作ってみようということで、実はそれを職員の施策提案に乗せたんです。 県のなかで年間の重点テーマに挙げられる項目に対して、これらのテーマに関わる人たちってどういう人たちなんだろう、という調査・分析を、公募制で作ってみないかと。

知事:
あぁ、タスクフォースをつくるのか。これもう職員施策提案に出してるの?

PLS:
はい。出しました。出したんですが、「この提案はどこが所管するのかで調整中」というか「調整できない」という声もちらっと聞こえています。

知事:
「やまの健康」ではプロジェクトチームをつくって、第1回の会合をスタートさせてるんだけど。仕組みとして何か作っておくのはいいかもしれないね。

PLS:
自分たちの事務分掌の範囲だけではない形で取り組めること、それが別に専任でもいいんですが、例えば Google の「20%ルール」みたいなものが自分は気に入っていて。「業務の80%は与えられている仕事をする、20%はそれ以外のことをしてもいいよ」というルールです。8:2だと週1日になってそれはさすがに多すぎるから、9:1かな?と自分は勝手に思ってるんですが、でもそういう時間の使い方があってもいいんじゃないかと。


知事:
一案だね。みんなそうしたらやってみようと思う?

PLS:
はい。

知事:
そうなのか。

PLS:
今日ここに来るのも
「知事との意見交換は、君の事務分掌のどの部分にあたるのか?」と言われて。「職務としてどういう位置付けなんだ?」ということになって。

知事:
あぁ。そういうことになるのか。だからやるならやるで、そこをちゃんと整理しようということか。

PLS:
どこかで事務分掌を取っ払う時間があってもいいんじゃないかと。誰かのための仕事という時間が。

知事:
なるほどな。もし「どっぷり○○事務所だけの仕事でええやん」と言われたらどうする?

PLS:
届出業務だけをやっている人が多い環境で「事務所として意見をあげようよ」という機運にもなかなかならなくて。そんなところにタスクフォースみたいなものができて、地方事務所の人も、本庁で政策をずっとやってきた人も一緒に入る仕組みがあると、相乗効果が生まれるのかもしれません。

PLS行政でも分野を越えていろんな価値観の人たちと関わっていくことによって、逆に自分の職務のなかで「あ、こういうことができるな」ということが閃き、2割でやっていたサブのことが結局8割の本業務に活きてくる。それが風通しのよい職場になっていったり、仲間ができることで「自分は独りじゃないんだ」っていうようなマインドにも繋がってきますよね。

知事:
そういう相乗効果はあるかもしれないね。

Policy Lab. Shiga の今後について

知事:
Policy Lab. Shiga でもう1サイクル回したらどう?新たなペルソナを引っ張ってくるとか、提案したことをどう反映しようとしているのかチェックをするとか。

PLS:
当初1年かけてやるという目標でやってきたこともあり、ひとまずこのプロジェクトとしては終了する予定なんです。ただこれで終わってしまっても仕方がありませんから、個人がそれぞれ職場で実践していくというのは続けていこうと。

でも個々が独りで続けるのはしんどいでしょうから、3ヶ月に1回はみんなで会って近況を共有しあい、自分たちの活動を応援しあう場を持とうと。また、それだけだと我々以上の広がりがないですから、もう1回デザイン思考のトレーニングの場を作り、県職員以外の行政職員という括りでの広がりを作ろうと。

すると県内某市の市長から「やりたい」という話をいただいて。まだ企画は詰めているところなんですが、その市の職員の人たちとも一緒にやろうみたいな展開も計画していまして。…ただ、せっかく僕ら県職員なわけですから。

知事:
そうだよな。

PLS:
やはり最終的には自分たちの仕事にちゃんとフィードバックできるような動きをしていかないと、この場が逃げ場になってしまい、それは良くありませんので。業務外のサークル活動としてやり続けてもいけないという認識も持っているんです。

知事:
そうだよな。うん。その問題意識はよくわかります。

組織・現場の両面から浸透させていく

PLS:
今回開催したアイデアソンでは、「自分たちの周りにこのペルソナ、いそうだ」「何か自分に関わってそうだ」という思いで来てくれた方に多く出会うことができました。私たちの描いたペルソナに対して「自分の奥さんにそっくりだ」という人もいて。そのアイデアソンでつくった成果物について奥さんにも聴きに行きました。そのアイデアは失敗だったようでしたが。

知事:
でもそうやって一人ひとりをみて、どうしたらいいか考えていくことって大事だと思う。

PLS:
自分は仕事のなかでは、常に自分の親をイメージして仕事するようにしてますね。

知事:
わかるわかる。僕もそうよ。みんなそうじゃない?介護や医療のことを考えるときに、僕のお父さんお母さんが、親戚のおじちゃんおばちゃんが、とか、教育のことを言われたらウチの子が、とか。

PLS:
そのイメージする人物像を、自分一人だけではなくて、いろんな人たちと共有しあうことができれば。

知事:
わかるわかる。むしろ行政というところでは、本当は共有しないといけないんだよな。今回のタスクフォースのようなご提案について、「このテーマでやってみよう」というのでもいいんじゃない?

PLS:
いいと思いますよ。ぜんぜん想定とは違う問題が見つかりましたというのもあるでしょうから、テーマから外れてもいいように。

知事:
うんうん。あるかもね。

PLS:
実際にロールプレイでも、全然違うアプローチに変わっていきました。

知事:
どうしても「夏までにはこのような着地点で」とか決めながらやってしまうよね(笑)。…わかった。今日戴いた提案も、僕への提言として受け止めますよ。

PLS:
ありがとうございます。

知事:
と同時に、現場でも実践してよ。その経験が、数年経ったときに、デザインシンキングで出たアイデアを施策展開するときに、生きると思うんだ。

PLS:
両方から浸透させていくと。

知事:
どっちが先か後かではなく、色々やってみるというのがいいなぁ。

誰のために何をやっているのかをイメージする

PLS:
知事が今年度就任されたときに仰った「楽しく仕事をしましょう」という言葉にすごく共感して。自分が関わる仕事で「誰のために何のためにやっているのか」ということがわかっていると、すごいいいなと思ったんです。政策課題協議の資料でも、何のためにとか、事業の効果も書かれてるんですけど、自分が当事者だと捉えた途端にすごくぼやっと感じてしまって。

知事:
それもありますよね。協議するときに「資料1枚にまとめろ」というとそうなっちゃうところもあるんだけど。確かにその兼ね合いって大事だよな。

PLS:
「そんななか、実はこのテーマに関係するこういう人たちがいてね」という側面的な情報が、政策課題協議か何かの議論で使われていくといいんでしょうね。そうすると結果的な横展開としてあの事業とも繋がってくるよねという議論ができるかもしれないですし。

知事:
実はそういう予算の組み方、事業の作り方をしたところほど、予算が取れるんじゃない?説得力があるから。

PLS:
省庁でもいまEBPMの重要性が謳われてますけど、実はデザインシンキングはEBPMを政策的に補完するものなんですよね。このような視点がうまく政策形成のなかで噛み合ってくるようになると。

「人間中心」による「ニーズオリエンテッド」な動きができる
時間とチームをつくる

知事:
今日皆さんと話しててよかったなというか、自分が言ってることは間違ってないなと思ったのは、来年度の予算をつくる視点を出していて、その一番最初が「一人ひとりを大事にしよう」ということだったんですね。もちろん安全・安心・防災・防犯など色々あるんだけど、基本は一人ひとりだと。その次に言ったのが「ニーズオリエンテッドでいこう」と。それを掴もうと。

PLS:
「何に困ってるんですか?」と言われても、困っている人ってなかなか本当のことをなかなか言えないということがあるじゃないですか。例えばテレビのリモコン一つとっても、「テレビのリモコンで何が使いづらいですか?」と聴いてしまう。そうんじゃなくて、リモコンを触っている操作を実際に見ながら「じゃあなんでこの人はこのボタンを触ったんだろう?」「なんでこのボタンを触らなかったんだろう?」というところから始めていく。

知事:
その人にフォーカスしていく。その人が何をしているのか、何を言ってるのかとかいうところから、ということだね。で、ニーズを満たすために、困っていることを解決するために、試作品をつくる。そういうことを行政のなかにどう作れるかだよね。

PLS:
そういうことを動かせる時間とチームが、さっきの9:1ルールのような形ででも何かできれば。

知事:
1週間に1日だけ、まぁ1日がきついんだったら半日でも、兼務のような形でこっちで仕事しなさいっていうのは、アリかもね。全員そんなことをしたら大変なことになるけど。

PLS:
県職員全てがそれを希望するわけじゃないでしょうから、それをやってみるという県職員が一部にいても面白いんじゃないか。それによってこれまで行政が見えてなかった課題・問題みたいなものが見えてくるのであれば、そこから初めて対話が生まれてくるんじゃないか。

次のアクション

知事:
県庁内でももう一回何かやってみたら?勉強会みたいな形で「活動の成果について県庁内で話しますので、みんな聞きに来てください」と。

PLS:
調子乗りみたいな感じにならないですかね(笑)。

知事:
いや、そんなことないと思うよ。僕はこれいいと思うんだよ。そしたら今年入った入庁1年目の人とかも、皆さんと同じような思いをもった人が「あの先輩が何かやってるよ」と言って来てくれるんじゃない?

PLS:
うちの職場に新採職員が1人入ってるんですが、彼が私の Facebook の投稿を読んだようで、「何か面白いことやってるやん、もうないのか」という話は、確かにありました。

知事:
もしできたらさ。僕が行くよ。

PLS:
おお。

知事:
僕も行って「これはいい取組みだと思うから、みんなちょっと聴いてやってくれ」と。その勉強会の日程を相談してくれたら、僕行くよ。僕もいち参加者として来たと。この取組みには期待している。同じ悩みを持ってる人が来てくれて、一緒に考えて。…どう?

PLS:
一回やってみるというのはすごく面白いなと思います。

知事:
ディスカッションもしながら。面白いよ。チャレンジしてみよう、ぜひ。

PLS:
やりましょう。

知事:
ありがとうございます。楽しかった。

PLS:
ありがとうございました。ではまた日程を。