5月27日。甲西駅前にあるコワーキングスペース「今プラス」。

Policy Lab. Shiga の活動も今回から第2フェーズということで、集まりも誰でも参加できるようにしました。これまでセミクローズドにしていたのは「プロセスを重視する」というコンセプトをメンバー間で固めたかったからですが、やはりオープンにすると雰囲気も違いますね。

今プラスのよいところは、難しいことでも楽しく会話ができる雰囲気が作れるところにあるのかなと思います。これまで定例会のほとんどは県庁内で開いていたんですが、名前でなく UX 的にクリエイティブな空間がないなぁと感じています。こういう空間、県庁内でも作りたいですよね。

今回から3回連続で行う「未来アイデアソン」では、県内各地で活動している様々な団体と一緒に開催します。今回ご一緒するのは、湖南市内でWebサイトの制作会社を運営しながら、湖南地域に暮らす人々が集うクリエイティブなワークスペース(写真のように)を提供している「今プラス」の中野さんと、

湖南市で市外から複数のメンバーを受け入れ、地元の様々なステークホルダーと協力しながら、新たなコミュニティやビジネスを創り出していくプロジェクト「Next Commons Lab 湖南」の光田さんと長砂さん。

Policy Lab. Shiga は、行政経営の新たなプロセスを模索しています。

「県」というマクロなものでなく、あえてミクロな「県民の本音」というものを起点にしてサービス(施策)をつくることによって、共感しあえる行政を目指せないか。「滋賀に暮らす○○さんの2030年をデザインする」というお題のもと、これまで参加メンバーの関心ごとにそって4つのテーマを設定し、それぞれのテーマにまつわる人が滋賀で暮らす上でどんなことを思っているのか、観察やインタビューなどといった定性調査を行なってきました。その結果浮き彫りになったのが、4つのペルソナ(架空の人物像)でした。今日は、そのペルソナが2030年滋賀で幸せに暮らすためのアイデアを、いろんな人たちと考えていきます。

弟や同級生と自分を比べてしまい、自信を持てないでいる、13歳の中学生。

生まれてから現在まで滋賀を離れたことがなく、またいわゆる「地縁型」のつながりが苦手で、自分に合った居場所を求める、28歳の会社員。

田舎でも都会でもない、程よい自然や人との距離感を大事にしている35歳の主婦。

身内感のある「地元」を共有しあう周囲との距離感に悩む25歳のほぼ新人会社員。この4人が抱える問題は何か、そして彼ら / 彼女らにとっての幸せとは何かを考えながら、様々な立場の人とアイデアを出し合います。

しかし参加者間で「問題」の認識がズレていたり、誰かに任せっきりなアイデアを出してしまうと、現実味のないものとなってしまいます。そこでこのアイデアソンでは、以下の4つのルールを設けました。

よく行政が開く会議でも「仕組みづくり」という言葉が出てきます。ではその仕組みは、誰がどうやってつくるのか?仕組みや制度を語るのは簡単です。無理やり誰かに何かをさせるのではなく、楽しく利用したくなるような「サービス」を、各々の立場で考えましょう。なのでサービスの提供主体も行政だけでなく、普通のビジネスとして考えても構いません。

まぁとはいいつつ、今回の告知で初めて Policy Lab. Shiga を知ったという人も大半なので、まずは各チームがこれまでどんな調査をしてきたのか、というところから共有しあいましょう。

4つのテーブルを設けてリーダーを配置。参加者は15分ずつ4つのテーブルをまわって、リーダーからペルソナの詳細を尋ね、「彼ら / 彼女らが2030年滋賀で幸せに暮らすうえで問題になりそうなこと」は何か、確認しあいます。

テーブルのホストを務めるリーダーにとっては、ペルソナが完成して以降初めて公にヒアリングしていく場となります。いろんな人に実際みてもらうわけですから、そりゃドキドキしますよねw

厳しいツッコミも出てきます。そういった声を受け入れて修正を考えていくことも、このアイデアソンの狙いのひとつです。

参加者には、テーブルのまわる順番を指示した、4!=24通りの異なるカードを渡しています。4回とも同じメンバーで被らないようにという細かい配慮ですw

15分経ったら次のテーブルへ移動してくださいね。

こうして参加者がテーブルをまわっていくことで、いろんな気づきが蓄積されていきます。

その後、参加者は興味のあるテーブルに移り、グループを形成します。このグループでこれからアイデア出しに臨むことになります。

全体のバランスを考慮して1グループ6人を定員としました。グループに入りたい人はリーダーからステッカーをもらってくださいね。

ステッカーはこんな感じ。イラストからも愛着をもってもらえれば。

ここから2時間、各グループでのアイデア出し作業です。

ホスト役を務める各チームのリーダーも、徐々に自分なりにやりやすい進行方法を掴んでいるようです。各テーブルそれぞれ違ったアプローチで話が進んでいます。

このテーブルが見つめるペルソナは少し重たいところがテーマになっていることもあり、悩みながら模索をしています。

付箋を整理して俯瞰できるようにしようとするところも。

ここのテーブルは、模造紙いっぱいにキーワードを書いていき、参加者とアイデアを整理しています。Policy Lab. Shiga は議論の手法を学ぶ場ではないので、そこは各リーダーの自由なやり方で進めてもらうようにしています。

参加者どうしの顔が見えてくると、いろんな視点からの声がでてきます。

「福祉」「交通」などという限定的な枠のなかで物事を捉えるのではなく、「○○さん」という人の本音を起点にお互い何ができるのか話をすることで、「私だったらこういうことができる」「僕ならこれができそう」というように、各々がもつ異なる知識や経験を、その解決のためにシェアすることができるのだと思います。

別に行政だけが施策をつくらなくてよいのです。実のところ企画段階では「サービスの提供主体も行政だけでなく、普通のビジネスとして考えても構わない」ということは想定していなかったのですが、そのような枷をなくすことで、「行政だからできること」が見えてくるのかなと気付きました。

。。。と盛り上がっているうちに、約束の2時間が経過しました。今回のアイデアソンで、各テーブルから、どのような問題が共有され、どのようなアイデアが出てきたのでしょうか?アイデアソン終了後、各リーダーが書いた1日のまとめ(一部編集しています)を紹介します。

守くんが描いている理想は狭い価値観から作り出されたもので、自分に合ったものではありません。その背景には、素直な気持ちを言える人がなく孤独であることや、自分の好きなものが分からず他人の評価軸に振り回されてしまう、といったことがあるのではないか。もっと色々な生き方や価値観があり、「悩みを抱えているのは自分だけではない」ということに気づいてもらうことが必要と考えました。
そのために、全国の学生から体験談を集めまとめたものを作成してはどうかという意見に辿り着きました。例えば目次で「明日学校に行きたくない時」や「優秀な弟に勝つためには」といった部分を読むと、他の学生がその時どうしたかという体験談が共有でき、ヒントを得られる。また彼らが参加したイベントや場所があれば、そこに併せて掲載もされているようなものです。また自分自身の体験も投稿でき、誰かの役に立つ実感を得られることも期待できます。

「7人それぞれが自分の知識や経験を駆使して守を幸せにするためのアイデアをワイワイ出し合えたことは勉強になるとともにとても楽しく、アイデアが1つにまとまった時はとても盛り上がりました」とチームリーダー。最後の盛り上がり方はすごかったですもんねw

拓也くんは、20代後半になり、大学時代からの友達の何人かが結婚や子育て等の理由で、会う機会が減ってきた、そのことに寂しさや焦りを感じています。
では、どうすればよいのか?彼は自分が飲み会や旅行を企画することで皆が喜んでくれることに、自分の存在価値を感じています。でも、今の拓也くんには新しい出会いはないし、自分一人で知らない人達との新しいネットワークを築くことには慣れていません。
つまり、自分の無理のない範囲で、ネットワークを広げられるよう促せばよいのではないか?という話になりました。
そこで、このテーブルでは「高校の同窓会」を主催してもらうように促せないか、という案が出ました。彼が得意なことは、ある程度知ってる人達を繋ぐことです。その役割を担ってもらうことで、拓也くんの満足度をあげるとともに、彼自身の出会いも広がります。再会からの恋愛や、違うコミュニティへもスムーズに入れるチャンスもあります。
そのために、例えば学校で同窓会のしやすい情報共有や場所の提供。きっかけとしての卒業10周年の通知など。また民間サービスとしての同窓会の手間やコストを下げる仕組等を構築できないか、話を進めました。
美花さんは現在の生活を幸せと感じています。そのため、2030年もその幸せを現状維持できるようなことを目指そうという話になりました。
しかし、現在の暮らしでは家庭の中で人間関係が完結しています。子供の成長や、夫の単身赴任次第で、今の生活環境に変化がもたらされる可能性があります。変化が起きたとき、自分に役立つ情報をどうやって集めるのか、また誰かに相談するのかするとしたらどんな人になら話すのか。
近所の人とは挨拶しかしないような関係であれば、逆に、近くにいない人になら少し悩みを話すことができるかもしれないと考えました。
そこで2つのアイデアが出てきました。一つは近所の公園に、役立ちそうな情報を配置したり、気軽に相談員に相談できる「移動型カフェ」。もう一つは「アンケート型情報アプリ」。アンケートに答えると個人の性格や生活に合った困りごと対処ツールを複数提示するようなサービスを考えました。
地元をもたない高橋さんが、就職して初めてやってきた滋賀。でもその職場で感じたのは疎外感でした。自分だけ違う方言。共有できない過去の思い出話。どことなくやりにくさを感じることになります。そんな高橋さんに対して、本人が頑張る以外に何かできないか考えました。
考えたのが、高橋さんが居心地のよいと思えるコミュニティを作ること。滋賀出身ではない人が集まれる場や趣味のサークルを作るという話が出ました。
具体的には、多くの時間を過ごす職場で、仕事の延長上に存在する「研修」の中で、いろんな人と交流できる場を作ればよいのではと考えました。職場の研修だと良くも悪くも半強制的に参加することになると思います。わざわざ自分で開拓して入って行くコミュニティだとそれをすること自体、ハードルが高いかもしれませんが、職場の研修だとわざわざ感はありません。会社を超えて、同世代の人が集まる場にすること。そして座学ではなく、研修に来た人同士が交流できる参加型のものにするということを考えました。
過去の思い出は今更共有することはできません。しかし、これから作る思い出は共有することができます。滋賀に来て、たとえば研修などという学びの場を通じて、自然に人と人が交流できる場があれば、高橋さんにとって、もっと滋賀での暮らしが楽しくなるかもしれないと思いました。疎外感があると思っていた周囲の人たちの雰囲気や話も違う捉え方になるかもしれないと思いました。
研修は、例えば「うみのこ」に乗ってみるというもの。みんなが話す小学生の頃には体験しなかったかもしれないけれど、今からでも体験してみることで思い出を共有することができるのではと思います。
全然共有できないわからない話を聞いた時。わからないことはわからないでいいのかもしれませんが、共有することができたならそれは楽しいことかもしれません。私の高橋さんのイメージは、わからないからもういいやと考えるタイプというよりは、私もわかってみたいかも、仲間に入ってみたいかもと考えるタイプなのではないかと少し思っています。だから、彼女がみんなの共有している思い出を少しでも共有できたならもっと滋賀が楽しくなるのではとやっぱり思います。とりあえず、今のところのお話です。

これらのアイデアがいろんな人たちの声を基にしているとはいえ、所詮いわば「密室」で作られたアイデアに過ぎません。大事なのはこの後の動きです。このアイデアは本当に必要とされるものなのか?必要としている人は本当にいるのか?を検証し、ブラッシュアップしていかないと、アイデアは良いものになりません。

出てきたアイデアが「大人になって初めての『うみのこ』体験」なら、一度チラシなんかを作ってみてイメージしてもらうのもよいかもしれませんね。施策は柔軟に軌道修正できるよう、これから次のアイデアソンまでの間、各チームは検証を進めていきます。またその様子も(無理のない範囲で)レポートできればと思います。

。。。ひとまず、第1回目のアイデアソンは終了です。本当に皆さん、長時間にわたりおつかれさまでした。

こういう集まりは、終わった後にみんなが知り合っていくのが楽しいんですよね。連絡先など交換しまくってくださいw

前から知り合いどうしの2人だと思っていたら、初対面だったそうですw

そして今プラスを後にする Policy Lab. Shiga のメンバー。「草津でどこか話ができるお店知りませんか?」ん、打ち上げ?

そして夜、草津駅前のお店。

なんとアイデアソン終了後、今日出てきたアイデアを早速検証しようと、2つのチームがインタビューをしていました。

今日どんなアイデアが出てきたのか話をしています。これも尋ね方とかあると思うのですが、それも試行錯誤で。

こういう検証はすぐにやった方がいいですよね。1年寝かせるとかあり得ないです。