
Policy Lab. Shiga では、これまで参加メンバーの関心ごとにそって4つのテーマを設定し、それぞれのテーマにまつわる人が滋賀で暮らす上でどんなことを思っているのか、観察やインタビューなどといった定性調査を行なってきました。
その結果浮き彫りになったのが、4つのペルソナ(架空の人物像)です。ここでは、その一人ひとりの人物像について、簡単に紹介していきます。
Phase 2で実施する「未来アイデアソン」当日も、彼らの人物像について調査したメンバーから紹介する予定ですが、参加していただく方はできれば事前にご覧いただき、彼らが2030年に滋賀で幸せに暮らすうえで彼ら自身も語り得ない「本音」を考えてみてください。Policy Lab. Shiga では彼らの「本音」とは何か、それにどう応えられるか、を重視していきます。
同じ言葉、同じ思い出、同じ感覚。持ってない私は置いてけぼり。 (25歳 女性 会社員)

彼女の家族はいわゆる「転勤族」。父親の仕事の都合上、何度も引越を繰り返しながら育った彼女は、特定の場所に長く住んだ経験がありません。山梨で生まれ、3歳から6歳までは中国の北京で過ごし、小学校1年から3年までの間を栃木で過ごしていました。そんな彼女が物心のついた小学4年の頃、今度は栃木から石川へと引っ越します。
その転校先の小学校で、彼女はある戸惑いを感じました。周りと言葉(方言)が違うのです。
どうやらクラスメートもそのことに気付いているようで、休み時間になると物珍しそうに彼女に話しかけてきます。でも、そこには何か不思議な疎外感がありました。同じ方言で仲良く会話しあう周囲と、ひとり違う方言をもつ自分。クラスの流行も自分の知らないことばかりなのです。
「『地元』のない私は、ずっとその土地に住んでいた子たちと過去の思い出を共有することができない。そしてまたそのうち転校するから、彼らに馴染み切ることは難しそう…」。周囲の楽しそうな表情になんとか合わせようと努力するものの、それはしんどさを伴うものでした。
その後も何度か転校を繰り返した後、彼女は京都の大学へと進みます。すると、これまでの小中高校とは違って、みんなが出身地を異にしていることに気付きます。言葉もみんな違って当たり前。全員がお互い初めましての関係で会話を始めることのできる大学という環境は、彼女にとってはとても過ごしやすい場所でした。高校まで背負ってきた荷物を降ろしたような気持ちになりました。サークル活動も積極的に取り組み、たくさんの友達ができました。
その後、彼女は関西の企業に就職をします。勤務地は滋賀県内の支社ということで、住まいも会社から通いやすい駅周辺の賃貸マンションを選びました。
しかしその職場の歓迎会で、彼女は戸惑いを感じます。方言全開の身内しかわからないような話。自分の育った場所に対して執拗に誇りと愛着を持っている感じ、そして周囲の楽しそうな表情。それは、やっと抜け出せたと思っていた高校までの人間関係の感じと少し似ていました。
