
10月20日(金)の夜、Policy Lab. Shiga 第2回の定例会を開きました。場所はいつもの県庁内会議室です。
今回はこのプロジェクトに賛同してくださる方をオブザーバーとして招きつつ、各チームごとの進捗を共有しあいました。各チームの報告とフィードバックで出てきた声などをまとめます。
滋賀で働く人
いま「働き方改革」や「ワークライフバランス」といった一種のスローガンがさけばれるなか、滋賀で働いている人にとってその言葉はどう映るのかを見つめようとするチームです。
「今想定しているのが、いわゆるサラリーマンとして勤めている人で、若手世代、20代から30代ぐらいで結婚していて、大体子どもがいるぐらいの人をターゲットを絞って話を聞いていってはどうかなというところで、今各チームメンバーの知人友人経由で話を聞いていってみようという話になっています。
都市部だとキャリアパスを意識して、副業を認めるべきだとか、自分自身活躍していきたい、こういうことを会社でやっていきたいという人の話をよく耳にするけど、滋賀にいる人たちって、むしろいまある生活を10年20年続けていきたいっていう人が多いんじゃないかなというような話になりまして。その仮説を確かめる意味でも話を聞き、仕事だけじゃなくて生活の価値観も探っていけたらと思っています」
このチームはテーマがざっくりしたためか人数も多く、まだチームとして誰を見つめたいのかが定まってないような感じです。オブザーバーからも「むしろリーダー自身がなぜ働き方というテーマを選んだのか、どこに自分の気持ちが乗るのか、そこを探ってみては。この人がいいだろう、ではなくて、この人に聞いてみたいという思いを大事にしては」という意見がありました。
このプロジェクトは市場の規模よりもテーマ発案者個人の思いを重視しています。発案のきっかけになった「働き方改革への違和感」みたいなものをもっと自分ごととして捉え、それを代弁してくれそうな人を見つけてみるのでもよいのかもしれません。もしそれでも焦点が定まらなければまず誰かに話を聞いてみてそこから視点を定めてみるという流れでもよいので、まずは一歩動ければ、という話になりました。
田舎を去っていく若者たち
次は竜王出身のリーダーが、竜王を出ていく同世代の人たちの思いを知りたいというところから始まったチーム。
「県内の他市町に移った人ではなく、県外に出た人に焦点を当てています。さらに竜王を好きか嫌いかという絞り方ではなく、客観的に状況がわかるいま住んでるか住んでないかというところでインタビューの対象者を決めようということになりました。当初は竜王に近しい町の人なら誰でもと思ってたんですが、背景も違うでしょうから、リーダーの出身地である竜王町に一旦絞り、そこからわかってきたところが出てきたら、他の市町の方にも当たってみようと。
むしろリーダーの関心ごとをメンバーが探っていく感じで動いています。このチームでは「LOVE」というキーワードを持ってるんですが、リーダーは小中学校時代の思い出に関心を持っていて、そこを共有できる人とできない人との隔絶だったり共感だったりするところで違いがあるのか、そういう所を探ろうかなと思っています」
よく滋賀県出身の人たちの共通体験としては「うみのこ」がありますよね。ああいう強烈な体験が何か滋賀に対する愛着、郷土愛として残るものはあるのかもしれませんが、実際はどうなのでしょう。特にこのチームはリーダーの個性が魅力なので、そこを大事にしつつ、メンバーどうしで迷子にならないようサポートしあえるといい調査ができそうです。
滋賀で育む子どもの居場所
次は「子どもの居場所」という難しいテーマですが、難しいなりに真正面から一生懸命取り組んでいるチームです。
このチームでは滋賀での居場所という観点で、3パターンの小中学生に絞っていました。不登校や虐待といった様々な問題を抱えている子と、県外の学校に通う子、そして外国人の子ども。そのなかでも今月は不登校や虐待というテーマを調べ始めたそうです。
「最初にそもそも虐待とかの児童の支援はどうしているのかというところを、県庁子ども・青少年局の担当者に聞きに行きまして、制度や仕組みを教えてもらいに行ってきました。
その後1件不登校になった子をもつ親に話を聞きました。あともう一つ、D.Live の集まりに参加させていただき、実際にどういう形で子どもを支援しているのか、どういう子どもが集まってくるのかというのをお話を聞きました。
いま活動で悩んでいるのは、インタビューした方の繋がりから支援団体や福祉協議会の方に話を聞く機会ができているんですけども、結構幅広く繋がりすぎていて、アプローチ先はある程度絞らなきゃいけないなということ。あと支援団体だけを頼りにしていると、お金がなかったり親が協力的でない家庭の子どもにまで掘り下げられないということ。児童相談所などのケースワーカーさんを当たればいいのか、まだそういう人たちに当たれていないので、そこを深く掘るにはどこをアプローチすればいいのかというところで悩んでいます」
ちなみにこの日はその取材先でもあった D.Live のスタッフさんもオブザーバーで参加してくださいました。不登校の小中学生の支援や一人親家庭の居場所づくりに取り組むNPO団体です。活動を伺っているとまさに我々が取り組もうとしている人間中心思考のアプローチを重視されていて、参考になると思いお声がけしたのですが、相手への聴きかた、信頼関係の築きかたなど、様々なアドバイスをいただきました。
地域コミュニティと若者の接点
続いて、若年層のコミュニティとの接し方を見つめるチーム。このチームのフィードバックは盛り上がりました。w
「自分自身が地域でいろんなことをやっていきたいという気持ちがあるんですけど、近所の人ともあまり話したこともないですし、割と新興住宅街なので、あまりそういう機会がないんですよね。
今って社会的には、震災とか社会的な議論も重なって『地域コミュニティって大事だよね』ということってすごく言われると思うんです。でも若者自身がそもそも地域コミュニティに入っていきたいと思っているのかよくわからない。一方で地域とは別に趣味やビジネスといったテーマに基づくコミュ二ティもいっぱいある。そういうコミュニティさえあれば、別に地域に根ざしたコミュニティってなくてもいいんじゃないかという議論もあっていいと思うんです。そこを観察などを通じて深掘りして糸口を見つけたい。
一方で、一度インタビューをさせてもらった方から『今はテーマ別コミュニティに入っているけど、地域に根ざしたコミュニティみたいなものとも繋がっていくともっと面白いんじゃないか。コミュニティに入ってみて初めて意義とか有難さとか良さがわかる』と言われた。インタビューを重ねることもいいんですが、実際に地域コミュニティを覗かせてもらうことも必要なのかなと」
この「テーマに基づくコミュニティさえあれば、別に地域に根ざしたコミュニティってなくてもいいんじゃないかという議論」についてはオブザーバーからも共感する声がありました。
「そもそも地域コミュニティはセーフティネットという自治体的な考え方があるから入らないといけないということになっている。でも自分の友達は8割ぐらい東京にいて、ほぼ毎晩 LINE などでコミュニケーションするなかでコミュニティができている。東京へ出張したらご飯食べるし遊ぶし、普通の友達と遊んでるのと全然変わらないっていう状態なんですね。
今の20〜30代ってコミュニケーション自体が大きく変わっている。そうなるとフィジカルな部分と心の部分のコミュニティって全然違っていて、地域と関わりたいポイントはあるけど、全部関わらなくてもいいんじゃないかと個人的には思っていて」
「コミュニティ」という言葉を敢えて使わないで取り組んだらどうかという声もありました。Policy Lab. Shiga は政策テーマではなく「人」に特化して問題を見つけるプロジェクトなので、結果として政策の再定義化や枠組みの再構築(リフレーミング)を厭わない姿勢で取り組んでいますから、極論「自治」そのものを再定義することになってもよいと思うんですよね。
県外からの移住
最後は県外から移住してきた(してくる)人を見つめるチームです。
「このテーマを選んだのは、私自身が引っ越して滋賀に来たんですが、住んでみてやっぱり滋賀はいいところだと思って。こんないい所いっぱい人が住めばいいのにと思ったことがきっかけでした」
でも「滋賀に住む人が増えてほしい」という結論ありきで臨んでいたためか、実際に県外に住んでいる人に話を聞いてみると、既にその土地で働きやすさや子育てのしやすさを感じているという話から、特に問題を発見できなかったそうです。
「滋賀に多く住まわせたいというよりかは、滋賀に住む人にとって滋賀に住むことが不安にならないような場所にしたいという思いで臨もうと思いました。今後はUJIターンした人に、滋賀に住んでどういうことが苦しいかということを聞いてみたいなと。また元々住んでいる人の苦悩も聞いてみたいなと思っています。
聞き方も、単刀直入に『滋賀に住みたいの?』というよりは、その人がどういうことを考えて生きていてとか、生活スタイルとか何を大事にしているのかを徐々に聞いた上で、こういう人物像だと考えたほうが、役立つのではないかと思いました」
人間中心デザインのアプローチも各チーム模索しながら取り組んでいます。実際に話を聞いてみることで色々と学ぶことがあるようで、その過程で各チーム焦点が定まってくるのかもしれません。
取材や記録方法について
その他取材や記録方法についても、チームごとに様々な模索をしているようです。
「取材対象は平日しか対応していないため、平日休みをとって行かなきゃいけない。県庁はいま忙しい時期なので、チームでも取材できる人数が集まらなかったりというのがネックになっています」
このプロジェクトは「事務分掌や所属長の命令」に縛られないようにする趣旨で業務外の活動として展開しているんですが、そのため平日に取材する必要がある場合はどうしても休暇を取らなければなりません。そこがこのプロジェクトの難しいところなんですよね。
「取材のあとでチーム内でワークショップみたいなことをしようと考えています。取材記録から、事実情報と相手の解釈とこちらが感じたことを色別に分けて『単語カード』として整理していくことを思っていて」
「話を聞く相手が自分の知人だと、その人がどういう思いでその発言をしているのか、先入観をもって聞いちゃうので。相手のことを知っている人と知らない人、目線の違う人両方が聞いた方がいいなと思いました」
今後行っていく洞察が「思い込み」にならないようにするためにも、取材情報の整理は各チームごとに工夫しあい、定例会を通じて共有しあえるといいなと思いました。今回の定例会ではあまり手法についての検証ができませんでしたが、そのようなフィードバックもどこかで設けられると良さそうです。

各チームが本格稼働してから初めての定例会でしたが、行政の決められた枠組みやお題ではなく「人」視点で会話をしあう、かつその会話に様々な立場の人たちの関心が繋がっていく、その様子が面白かったです。次回定例会も県庁で開催する予定ですが、そのうち県内各地で開催していくことで、その関心の繋がりを広げられたらなと思います。