2018年8月に発表した知事あての提言「『県民の本音』を起点にしたこれからの政策形成」を受けて、今年度から政策研修センターで実施される職員向け研修に、デザイン思考に関する講座が設置されることになりました。

滋賀県政策研修センター「研修ガイド」
https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/jinji/saiyou2/300271.html

そのうちの一つ、採用2年目職員に向けた研修では、1年間実践してきた私たちが講師となり、職員に向けたグループワークを行いました。

私たちが研修でやろうとしたこと

採用2年目研修は「近江地元学研修」といって、県内各地の地域コミュニティを各班が訪ね、その地域とそこに暮らす人々との関係を描くフィールドワークが行われます(以前は採用1年目研修として行われていました)。

私たちが担当することになったのはこのフィールドワークのための事前研修です。1時間・40名のクラスを午前と午後の2つ担当することになりました。

研修の内容を考えるにあたり、デザイン思考を1時間で伝えるのは無理!・・・そう思った私たちは、地元学研修当日のフィールドワークが有意義なものになるよう、あえてデザイン思考の概念を説明しようとせず、私たちが経験した「インタビュー」の難しさや落とし穴に気づく場をつくり、「県民の本音」を起点に仕事をすることの難しさ・面白さを知ってもらえるようにしようと考えました

ヒントはあえて教えない。インタビューに必要なことは、ただ話を聞くだけではなく、話していることを聞く姿勢、メモを取る姿勢、チームで解釈を加える姿勢が大事であることを、経験してもらうことにしました。

まずグループワーク

受講者には予めメールで「皆さんの地元についてインタビューをしあっていただきます」と伝えておきました。そのうえで前半は、1名(話し手)対5名(聞き手)のグループをつくり、「地元について思うことを引き出してください」というお題で、7分間の簡単なインタビューを行なってもらいました。聞き手の5名の役割分担はあえて自由に行なってもらいました。

7分が終わると一旦グループごとに振り返りをしてもらい、また7分今度は違う話し手に向けたインタビューを行なってもらいました。

実際に受講者の様子を見てみると、同じテーマでも下記のように、全然聞き方・記録の仕方が違うものだなと感じました。

  • 2回とも同じ質問をする
  • メモを取らない
  • グループの中で記録をしているのが1人だけ
  • 逆にグループ全員でメモをとる

私たちも2年前に同じようなトレーニングをして、同じような経験(失敗)をしています。

レクチャー

話が盛り上がることと、インタビューが充実することとは違います。受講者の皆さんは一体どんな話を聞きたかったのでしょうか?それはこの会話のなかで出来ましたか?そういったことを、これまでの私たちの経験からお話しました。

当日のスライドを参考までにシェアします。大事なのは、相手の人物像を正しく掴むうえで大事なことは、己の「主観・都合」を徹底して取り除こうということです。これが一人でではなく、チームでしっかりできないと、「県民の声を聞く」「一人ひとりを大切にする」ことは無理だと。

もう一度グループワーク

せっかくなので、最後に3回目のインタビューを試みてもらいました。

すると質問のコツを掴んだのか、話し手の目をしっかり見て質問するようになったり、前半のグループワークではイエス/ノーの質問しかできなかったところが回を重ねるうちにオープンクエスチョンをするようになっていたり。また話し手の答えに対して具体的な聞き返しをして情景を共有するよう話を進めたりと、いろんな工夫をグループの様子から垣間見ることができました。

初めて講師をやってみて

これまでは実践を通じて学ぶ側でしたが、今回初めて講師の側になってみて、相手に興味を持つということが、当たり前のことにみえて実はとても大切なことだと改めて感じました。研修後に受講者から「自分の仕事が県民に役立てているのかを考える機会になった」という話を聞いたのですが、今日の機会がデザイン思考を学び、実践しようと思うはじめの一歩になっていれば、嬉しいです。

また講師として、伝えることの難しさも感じました。いろんな反省もあります。グループワークの中に私たちも加わっていたらフィードバックやレクチャーもしやすかったのかもしれないとか、1回目のグループワークでは「相手のことを知るために」という前提の問いをしたほうがよかったかもしれないな、など、いろんなことを感じました。

1時間と限られた時間のなかでデザイン思考とは何かを具体的に伝えることはできなかったけど、ニーズをつかむ方法が色々あることは理解してもらえたのではと思います。講師をやってみて得られた反省は、また7月15日のミートアップで皆さんからフィードバックも得ながら、今後の取組みに生かしていきたいと思います。